「せ、芹沢!!」


「おっ、これ美味そ!いっただき~」



犬みたいな人懐っこい笑顔で、瑛美のお弁当からミートボールを奪ったのは、クラス一元気な芹沢 碧【セリザワ ミドリ】。



チラッと瑛美を一瞥すれば。


……あ。

さっきまであんなにイライラしてたくせに、好きな人である芹沢が現れた途端、“恋する乙女”な表情をしてる。


どんなに気持ちをスルーされても、やっぱり好きなんだなぁ。



「勝手に食べないでよ!」


「ボーッとしてるから、食べられるんだよ」



口の端についたミートボールのソースを、ペロッと舐める。その仕草に、瑛美のハートはズキュン。

あー、あれは、確実にもっと芹沢にハマっちゃったな。やれやれ。罪深い男だ、芹沢ってやつは。




「碧、何やってんだよ」


「いてっ」



芹沢の頭をポカッと軽く叩いたのは、ムードメーカーの矢崎 要【ヤザキ カナメ】。


薄い黒の大きな瞳が特徴で、ちょっと可愛いイメージがある。

矢崎は特に先輩に人気があって、弟にしたい後輩として可愛がられているらしい。




「おかずを分けてもらってた」


「分けてないし!あんたが勝手に奪ったんでしょうが!」


「お前……さっきパン5つも食べたくせに、まだ足んねぇの?」