そういえば、桜が言ってたっけ。
『恋ってね、結構思ってもみない瞬間にコロッと落ちちゃうものなんだよ』
本当に、そのとおりだった。
多分、千が3ポイントシュートを決めたあの瞬間には既に、恋に落ちてた。
ずっと自分に嘘をついて、何にもないって思い込んでいたけど、違ったんだ。
――私、千のことが好きなんだ。
「……金井」
「え?」
今、どこからか私を呼ぶ声が聞こえたけど……気のせい?
キョロキョロと辺りを見渡してみても、誰もいない。
やっぱり、空耳かな?
「金井」
誰かの呼び声は、私に拾われず、夜の空に吸い込まれていった。
嫌な予感がすると叫んでいるように、強い風が吹く。
初めての恋をした私は、風が届けてくれたその予感を振り払うように、一番星を仰いだ。