件名:大好きな君へ





「じゃあ、いいじゃん」


「よくない!だって……」



もし、こんなところを誰かに見られて噂にでもなったら、大変じゃん。


矢畑にめんどくさい思いをさせるかもしれないじゃん。



だから、やっぱり。

私が一人で帰ったほうが……。



「だって、何?」


「……だ、だって、」


「俺がしたくてしてるんだから、よくね?」



いつも無愛想で、冷たそうなイメージが強いのに、こういう時だけ優しくなるのはずるい。


その優しさに、すがりたくなる。



「それに、お前一人じゃ危ねぇだろ」



――ポン、と。


一瞬だけ頭に触れた、大きな手の温もりが、私の心臓を揺らす。