「じゃあ、いいじゃん」
「よくない!だって……」
もし、こんなところを誰かに見られて噂にでもなったら、大変じゃん。
矢畑にめんどくさい思いをさせるかもしれないじゃん。
だから、やっぱり。
私が一人で帰ったほうが……。
「だって、何?」
「……だ、だって、」
「俺がしたくてしてるんだから、よくね?」
いつも無愛想で、冷たそうなイメージが強いのに、こういう時だけ優しくなるのはずるい。
その優しさに、すがりたくなる。
「それに、お前一人じゃ危ねぇだろ」
――ポン、と。
一瞬だけ頭に触れた、大きな手の温もりが、私の心臓を揺らす。



