「悪ぃ」
たった一言そう言ったのは――矢畑。
矢畑にボールを投げると、見事それをキャッチした。
「頑張って」
「おう」
少しの間だけ、離れていく背中を見つめる。
まただ。また、鼓動がドキドキと加速して、おかしくなりそうだ。
一体、これは何なの?
多分、瑛美のせいだ。さっき私と矢畑がお似合いだなんて冷やかされちゃったから、意識してしまってるんだ。
それしか、考えられない。
「あ、そろそろ時間だよ」
瑛美に肩をポンと叩かれ、ハッと我に返る。
時計を見ると、8時8分。朝練終了時刻まで、残りわずか2分。
私たちは、練習用具の片付けを始めた。
ボールを回収する私の視界の端っこに、ぎりぎりまでシュート練習をし続ける矢畑の姿が映った。
その姿に、トクン……と優しく高鳴ったことに、気づかなかった。気づこうとさえ、しなかった。



