何か声をかけようと、落ちたボールから矢畑へと視線をずらす。

矢畑はもう既に、新たなボールをセットしていた。



ゴールを射抜く眼光と、今声をかけても聞こえないんじゃないかと思わせるくらいの集中力に、かけようとしたエールを呑み込んだ。




あぁ、すごいな。


今度の「すごい」はさっきとは少し違う。


シュートについて、感心しているわけじゃない。



矢畑自身が、すごいんだ。




成功しても、失敗しても、前へ突き進もうとするその姿勢が、とてもかっこいい。


矢畑が見据えているその先を、一緒に見たい。




時間が、止まったような気がした。


二人だけの空間が、胸を締め付ける。




矢畑がもう一度放ったボールは、回転しながらゴールへと放たれる。


ボールはリング上をグルグル小さく回りながら、音も立てずにネット内を通り抜けた。




瞬間、私の心の中に何かが落ちた。