千と私の距離が、少しずつ縮まっていく。


あと、数センチ。



「好きだ」


「私も、好き」



照れくさくても、何度も何度も。


君を傷つけるようなことを言ってしまったあとは、「ごめん」の後に「好き」って言って、上書きをしよう。


言葉は削除できないけど、私達は仲直りの方法を知っている。



君の声、君の想い、君の笑顔、君の優しさ。


その全てが、私の世界を、私の恋を、抱きしめる。




――チュ。


小さなリップ音を立てながら、私と千は初めてのキスをした。



涙のしょっぱい味と慣れない感触と千の温もりを感じる。


すぐに離れた唇。


私は千の左手に、私の右手を絡めた。




「一緒に帰ろう」