頭に浮かんだのは、「努力家」という言葉。
矢畑のバスケが大好きという熱量が、言葉にしなくても伝わってくる。
それほど熱中できるものがあるのが、正直羨ましい。
私なんて、憧れや羨む気持ちばかり。何か夢中になって一生懸命やっているものもない、空っぽな人間。
「大変じゃないの?」
「別に。逆にもっと練習したいくらい」
――でも。
たった一秒さえも惜しく感じるくらい、“今”を全力で駆け抜ける人もいる。
一本一本魂を込めてシュートする矢畑の姿は、普段より何倍もかっこよかった。
朝の静けさの中、キュッとバッシュの音がより際立つ。
またボールが宙を泳いで、ゴールへと飛んでいく。
入れ……!
気づけば、無意識にそう願っていた。
しかし、ボールはリングに当たり、はじかれてしまう。
下へと落ちたボールは、床とぶつかり大きく跳ねた。