小佐田先輩のちょうど後ろに私の靴がある。
小佐田先輩、早く帰ってくれないかな……。
「さっきまで、矢畑と話してたんだ」
「え……?」
千と?
何の話をしていたんだろう。
「試合のパスミスについて、ちょっとお説教をね」
「そ、そうですか」
私が考えていることがわかったのか、小佐田先輩はそう言って私を見つめる。
小佐田先輩のキリッとした鋭い目は、苦手だ。
私は、思わず目を逸らした。
「俺が嫌いだからって、あんなわかりやすくパスミスしなくてもいいのに」
ボソッと呟いた小佐田先輩の声を、私の耳が拾うことはなかった。
短く息を吐いた小佐田先輩は、「金井」と私の名前を呼んだ。



