桃葉の姿を見つけた俺も、持っていたボールを片付けることを口実に、用具室へと向かった。
「……千?」
何かを感じた碧が俺の背中を見ていたことを、俺は知らずに用具室に入った。
数回ドリブルを突くと、桃葉が俺に気づいた。
「あ」
俺を見て声をもらした桃葉は、すぐに目を逸らした。
チクリと胸が痛む。
俺はボールを投げて、かごの中にしまう。
「なあ」
これで、少しでもお前が怖い思いをせずにいられるなら。
俺は喜んでお前を傷つけて、嫌な奴になってやるよ。
「もうマネージャー辞めろ」
もう既に俺を嫌っているなら、もっと嫌われても同じことだ。そう思うと少しは楽になれた。
こんな風に言うことでしかお前を守れない、不器用な俺でごめんな。