また、笛の音が響く。
一歩、コート内に入った。
『頑張れ、矢畑!』
後ろから、桃葉の応援が聞こえてきた。
あぁ、そうか。
今までモヤモヤしていたことが、スーッと溶け込んで消えていく。
やっとわかった。
――俺、あいつのことが好きなんだ。
ちっぽけなことでムカついたり、熱くなったり、目で追ってたり。
時々傷ついたって、それでも頭から離れないくらい。
いつの間にか、恋をしていたんだ。
瞬間、世界が変わって見えた。
以前よりもずっと、眩しい世界。
鼻をかすめる雨の匂いも、バッシュのキュッと鳴る音も、ボールの感触すらも、大切に思えるくらい、その一瞬はかけがえのないものになったんだ。



