芹沢の瞳が、一瞬私を見た気がした。
気のせい……?
私の方から千へと移された芹沢の視線は、数秒足元へと落とされた後、ようやく瑛美に戻ってきた。
「あ、ありがとな」
芹沢は、はにかみながらお礼を言う。
「返事をさっさと言えよ!」
と言った矢崎に、芹沢は「わーってるよ。うっせぇな」と照れながらも言い返す。
「あー、なんだ、その……」
「な、何?」
「よろしくお願いします」
芹沢らしくない返事の仕方だったけれど、それが逆に可愛らしかった。
ニッと笑う芹沢に、瑛美は口元を手で隠すように覆いながら涙を流した。
クラスメイトとフユちゃんは二人を祝福するみたいに拍手をした。
私だけは拍手をせずに、二人のキラキラした瞬間を忘れないように胸にしまっていた。



