『タオルどうぞ』
俺に向けられた桃葉の笑顔から目を逸らした。
『このあとも頑張ってね!』
『……お前も』
『え?』
『お前も、頑張れよ』
タオルを受け取りながら、呟くようにそう言った。
本当は言うつもりはなかった。
だけど、喉から溢れ落ちた。
つい、悲しみを糧にして笑って過ごすこいつに、エールを送りたくなったんだ。
『うん、ありがとう』
ふわりと柔らかくなった桃葉の笑顔に、縮こまっていた心臓が急に大きく揺れ始めた。
優しい音を立てる胸に、さっきとはまた違う苦しさを感じる。
なんだ、これ。
体温が、少し上がった気がした。



