件名:大好きな君へ




三年生のいる最後の部活が終わった。


練習後のモップがけをし終えた俺達一年が帰ろうとしていた時。



『……っ』



うっすらと聞こえてきた、押し殺すように泣いている声。


用具室から聞こえてきた泣き声に引き寄せられるように、気づいたら足が動いていた。



『っ、う……』



用具室には、拾ったボールの数を数えながら、声を抑えて涙をこぼす桃葉の姿があった。


さっきまで、あんなに笑っていたのに。


影で泣いている桃葉の寂しげな背中から、目が離せなかった。



鼻をすする音、ポタッと涙が足元に落ちる音、持っていたボールが腕からすり抜けて床に当たって跳ねる音。


どれも、俺の胸に響き渡った。



『……ダメだ、もう一回数え直さなくちゃ』



泣きながら数えているせいか、何度も何度も数えるのをやり直していた。



『1、2、3……』



どんどん数える声が小さくなっていき、また最初から。


その繰り返しが、呆れるくらい続いた。