胸の苦しさと恋愛感情を忘れるように、目を閉じた。
瞼の裏には、ある記憶が映像として流れていた。
――あれは、中学一年の春。
正式に部活に入部した一年が、自己紹介をしていた。
『金井桃葉です。よろしくお願いします』
最初は、“マネージャーの一人”くらいにしか見ていなかった。
やる気がなさそうだった桃葉を見て、すぐに辞めるんだろうなと勝手に思っていた。
あの頃の俺にとって、金井桃葉という人間はその程度の存在で、どうなったって関係のないどうでもいい他人だった。
そんな印象が変わっていったのは、夏の大会が終わり、三年生が引退した頃だった。
『今まで、ありがとうございました』
三年生に寄せ書きと小さな花束を贈る。
桃葉も、三年のマネージャー二人に笑顔で渡していた。



