背後から声がして顔だけ振り向くと、職員室から出てきた千がいた。
「そいつに触らないでください」
「何で?」
「俺、言いましたよね」
近づいてきた千が、私の髪に触れている方の小佐田先輩の手首をグッと掴み、強引に離した。
「『またこいつを怖がらせたり泣かせたりしたら、許しませんから』って」
「あぁ、言ってたね。でも、別に俺は何も……」
「何も?こいつがこんなに怖がってんの見たら、そうは思えませんね」
千は小佐田先輩を睨み、小佐田先輩の手首をギリッと強く握り締めた。
小佐田先輩はその痛みに顔を歪める。
「それと」と、千は続けて言った。
「ヌマセンが、部長のこと待ってますよ」
小佐田先輩の手首から手を放した千に、小佐田先輩は小さく舌打ちをし、職員室へ行った。
職員室に入る前に私を見た小佐田先輩の目は、「諦めないから」と言っているようだった。



