瑛美と桜には、千の誤解が解けていないことを伝えてある。
この苦しみを、誰かにわかってほしかった。
「あのさ、桃葉」
「……桜、なに?」
「桃葉は、矢畑くんのどこに惹かれたの?」
桜の優しさが、俯きかけていた私の顔を上げさせた。
どうして今そんなことを聞いたのか。
それはおそらく桜は、この前、瑛美に似たようなことを聞いた私と同じ気持ちなのだろう。
そして、私が抱えている苦しみを紛らわせようとしているんだ。
「あっ、それあたしも聞きたい!」
瑛美も桜に便乗してそう言った。
恋バナスイッチが入った瑛美の表情は、キラキラしていた。
「えっとね……」
何から話そう。
千と過ごした記憶が過ぎる脳裏に最初に浮かんだのは、千を好きになった瞬間と千が好きだとわかった瞬間だった。



