泉美は押し殺すようにそう呟くと、長いまつげを伏せてうつむく。


小さな手をきゅっと握りしめて、悲しそうに眉を寄せる表情に、俊はこの上なく焦った。


「え、あの、瀬野さん!? もしかして、気付いてない?」


「……何がですか?」


そう言って俊を見つめた瞳は、今にも泣きそうなくらいうるうるしている。


そのとてつもなく儚げで可愛らしい様子に、俊は胸を打ち抜かれたような感覚がして、思わず胸を抑えた。


「…篠宮先輩……?」


そんな顔をさせてしまった罪悪感と後ろめたさ、気づかない鈍感さと天然さ、わかりやすいヤキモチに、俊はもう心臓を撃ち抜かれて崩れ落ちてしまいそうだった。



「瀬野さん、この話には続きがあってね」


「え……」


「ずっとずっと好きだったその人は、今では俺の彼女になってくれたんだ」



「っ……それって……!」



なにかに気づいたように目を見開く泉美が愛おしくて、かすかに染まった頬を撫でる。


突然触れた俊の熱に、泉美はさらにじわりと頬を紅くした。


その反応があまりにも可愛らしく、もうどうしようかと頭を抱えそうな俊をよそに、泉美は嬉しそうに目を細める。


「先輩……それって、ずっと……私のこと、……好きでいてくれたってことですか………?」


頬にある俊の手に自分の手を重ね、ちょこっと首を傾げる泉美に、俊は少し拗ねたように頬を染める。