「今、ちょうど暑かったから…水浴び、な~んて」


わざとおどけてみせるけど、コタちゃんの反応はなし。



…だよねぇ。



「そろそろ行かないと、もっと先生に怒られちゃうよね」



立ち上がろうとすると、コタちゃんが手を引っ張ってくれた。



「ありがと」



「お前さ、怒らねーの?俺のせいで川に落ちたのに」



やっと、視線のあったコタちゃんがずぶ濡れのあたしを見て唇を噛む。



「水も滴るいい女ってあたしのことだよね。この際、コタちゃんも入れば~?」



虫で大騒ぎしたコタちゃんの自尊心を傷つけまいと、敢えてはしゃぐ。



バシャバシャと、水音をたてていると。



「バカじゃね?でも、無理に肩肘張る必要ねーって思わせてくれるよな…お前のそういうとこ、好きかも」



「え?なんて言ったの」



しまった、水の音で聞こえなかった。



「一回しか言わねーよ」



ニヤリと笑うコタちゃんを見て、少しだけホッとした。



笑うってことは、機嫌は悪くないんだよね。



「また、教えてね」



「甘えんな」



「えへえへ」



「笑い方がキモイ」



「そんな言い方ってなくない!?これでもあたしは、コタちゃんのフィアンセなんですけど」



「知らねぇよ」



いつもこんな感じのあたしたちだけど。



この修学旅行で、一歩近づけたのは間違いない…よね!?