ほんとに麗華さんじゃないの?

ほんとに被害者ってことなの?



動揺と焦りで頭が真っ白になる。



なら犯人は誰?

麗華さんじゃないなら他に誰がいるの!?



未戸香と麗華の言い合いはやまびこのように響き、その声を聞いた生徒達が窓から中庭を覗く。



…やり過ぎた。

ここは一旦止めないと。





「もういいです。また話しましょ。みんな見てるんで立ってください。」

「ごめんね、未戸香ちゃん。」





「あたしじゃなく陽一くんに謝ってよ」と思いながらも未戸香は麗華の肩を掴み校舎へ入っていく。





「なに今の。」

「蛯原麗華泣いてた?」

「蛯原も泣くことあんだな。」

「可愛い顔が台無し。」

「兄さんは黙って。」





いつものメンバーが2人を見ながら言った。


楓の隣には真顔で後ろ姿を見る陽一。








誰にも気づかれないまま、未戸香は一直線に大きな落とし穴へと向かっていく。

その穴に落ちるのは未戸香だけじゃないことに他の誰にも知るよしもなかった。