あっという間に放課後を迎え、カバンに荷物を詰め込む。
体育が終わってすぐ、陽一くんには“しばらく話しませんから”と書いたメモを渡した。
戻ってきた紙には“話せるまで気長に待つよ”と書かれていた。
説明なんてしなくてもあたしが話さない理由は陽一くんが一番わかってるはず。
だからそれ以上は何も言わない。
降っていた雨も今は止んでる。
帰るなら今のうちだ。
未戸香は足早に教室を出た。
家までの道のりを音楽を聴きながら帰る。
ちなみにお気に入りの曲は沢山ありすぎてひとつには絞れない。
口ずさみながら角を曲がった時、なんとなくカーブミラーを見た。
そこで初めて気づいた。
…つけられてる?
ミラーにうつる人影。
たぶん男。
これっていわゆるストーカーってやつだよね?
怖くなった未戸香は全力で家まで走った。
「未戸香?そんなに息切らしてどうしたの?」
ちょうど買い物から帰ってきたお母さんと出会したから「あのね…」って言おうと思った。
でも、
「雨が降ってくるかもって思って走ってきたの。」
「そうなの。間に合ってよかったね。」
「うん。」
心配かけたくなかった。
それにたまたまストーカーに見えて実は違うかもしれないし。
勘違いだったら困るから今は黙っておこう。
