どうしよう、一度は目を逸らしたけど拭かないと風邪を引くかも。
そう思って陽一くんのところへ走った。
受け取ってくれるかな。
「こ、これ…良かったら使って。」
目を合わせないように俯きながらタオルを差し出す。
「でも」
「いいの。昨日だって濡れたのに…風邪引くよ。それとも、あたしのだから嫌?」
なかなか受け取らない陽一くんにちょっと意地悪をしてみた。
…返事が来ない。
やりすぎちゃったかな。
顔を上げると、頭をナデナデされた。
「男子集合!」
「ありがとう。助かるよ。」
先生に集合をかけられた陽一くん達は一斉に駆け出す。
撫でられた頭に手を置いて呆然とする未戸香。
撫でられた…
みんなが夢見るナデナデを陽一くんにされちゃった。
意地悪返しだとわかってても、胸の高鳴りを止めることなんてできない。
せっかく恋にストップを掛けたのに、また動き出しそうになる。
「ほんとのほんとにバカ。」
決めた。
しばらくあなたとは話しません。
じゃないと恋の列車が暴走しそう…
整列している陽一に小さくあっかんべーをし、もう彼のペースには巻き込まれないと誓った。
