重ねた手を陽一くんが引っ張った。
体はそのまま前のめりに倒れ、いつの間にか腕の中に埋まっていた。
ななな!!
これじゃまるで!
「よ、陽一くん!!なにして」
「少しだけ…少しだけでいいからこうさせて。」
耳元で呟かれる声に全身の力が抜けていく。
「麗華さん、いるじゃん。ダメだよ…浮気になっちゃう。」
「今だけは未戸香を感じたい。だから許して。」
「なにを??」
腕から開放された瞬間、雨で冷えた唇に更に冷えた唇が当たった。
…え。
なにこの状況。
あたし、キス…されてる?
真っ白になった頭が一気に現実に戻される。
カーッと顔が熱くなるのが自分でもわかった。
麗華さんがいるのに!
あたし彼女じゃないのに!
でも、でもね…全然嫌じゃないの。
むしろ、もっとしたいって思っちゃう。
ダメだってわかってるのに…もっとって
欲が出ちゃう。
自分勝手な感情を抑え、未戸香は陽一の腕を掴んだ。
「ごめん。」
「ううん。」
顔を見合わせ微笑む2人。
イケナイことだってわかってる。
でも、今だけは彼を感じたい。
今だけは…彼の隣にいさせて。
