「未戸香、泣かないで。」

「泣いてない。」





雨のせいでそう見えるだけ…

切ないだけで涙なんて…



そっと手のひらが頬をおおった。

雨が降って冷たいはずなのに、何故だか伝わる温かさ。





「陽一くんのバカ。」

「うん。」

「こんなところでなにしてるの…?」

「…内緒。」





…同じだ。

あの日と同じこと言ってる。



力なく笑う陽一くんに胸が痛くなる。



なんで笑うの…

ほんとは笑いたくないくせに。





「やめて…」

「え…?」

「無理してまで笑わないで…」

「無理なんて」

「してるよ!してるじゃん!だって…」





だって泣いてるじゃん。

雨なんかじゃない、紛れもない陽一くんの目から流れる涙、あたしは見えてるんだよ。





「強がんないでよ…弱いところ見せてよ。あたしじゃ頼りないかもだけど支えるから…」

「うん…ありがとう。」





とめどなく流れ落ちる涙に陽一くんの手が触れる。





「未戸香こそ泣かないで。」

「誰のせいだと思ってんの。」

「ごめん。」





優しく涙を拭き取る陽一くんの手。

ただ無意識に自分の手を重ねた。

すると、