その日の夜。
未戸香は雨が降る夜空を呆然と眺めていた。
不意に思い出すのはあの日のこと。
あの日も雨が降ってて、雨の中ずぶ濡れになってたんだよね。
「まさか、いたりしないよね。」
なんとなく、ほんとになんとなくいたら…って考えちゃう。
この雨の中だからいるわけないのに。
あの日会ったのはたまたまなのに。
もしかしたら…って思っちゃう。
いても立ってもいられなくなった未戸香はこっそりと家を抜け出しあの公園と走った。
水溜りには目もくれず思いきり走る。
公園に着き、未戸香は目を見開いた。
「なんで…」
なんでいるの…
雨の中、ブランコに座ってる彼を見つけた。
傘も刺さずただ座ってる。
手から傘が落ちた。
軽くリバウンドした音で彼は振り向く。
「未戸香…なんでいるの。」
「それはこっちのセリフだよ!!なんでいんの!?傘も刺さないでなんで座ってんの!!」
自分でも何に対して怒ってるのかわからない。
ただ怒りが込み上げてくる。
こんな夜中に1人で、しかも傘は刺してないし。
風邪引いたらどうするの。
熱でも出したらどうするの。
胸を押しつぶすほどの切なさが波のように押し寄せてくる。
