夏休みが明けた8月14日。



──ガラガラ

ドアを開け一歩踏み出した瞬間、陽一くんの隣に黒髪の女の子がピタリとくっついているのが見えた。



…あ、そっか。

付き合ってるだっけ、陽一くんと麗華さん。



未戸香の存在に気づかない2人が楽しそうに笑う。


胸がチクリと痛んだ。


シンデレラと王子様。

お似合いすぎる2人に「おはよう」すら言えないまま背を向けた。





「未戸香ー?」





階段を下りようとしたあたしを誰かが呼ぶ。

振り返ると美穂が駆け寄って来るのが見えた。





「あ、美穂…」

「どこ行くの??」





なんとなく下に行こうとしただけだからなんて答えればいいか口ごもる。





「…ねえ美穂、恋バナしようよ。」

「恋バナ?」





誰かに聞いて欲しい。

じゃないと、今にでも心が潰れそう。

張り裂けそうで痛いの。




誰もいない屋上。

鍵は掛けてないから誰でも出入りは可能。


近くのベンチに座ると大きなため息をついた。