「未戸香、俺…」 「あたし行く場所あるから。」 「未戸香!」 考えたら腹が立ってきて声を聞くのも嫌になってきた。 何か言いたかったみたいだけどもう知らない。 あたしは光希に背を向け、長い廊下を全力で走った。 「未戸香!そっちは───」 遠ざかる光希の声は次第に聞こえなくなったところで、足に急ブレーキをかける。 「え、ここどこ?」 逃げるのに必死になっていたら自分が今どこにいるのか分からなくなった。 戻るにもどこから来たのか分からないから戻れない。