パっと弾けたように笑顔になる先輩。
周りも止まった時計が動きだしたかのように別荘に向かって歩きだす。
「未戸香も行くよ。部屋ね、すごく広いんだよ!」
「そうなんだ…。」
嫌でもわかる。
触れちゃいけない話だったってことぐらい。
梓先輩は“海が嫌い”って言ったけど、きっと別の理由があるに違いない。
じゃなきゃあんな顔しないよね、普通。
何事も無かったかのように未戸香は先を歩く美穂に駆け寄った。
部屋は美穂と共同。
荷物を置き部屋を出ると陽一くんの出会した。
「あたし、友達と旅行って初めてなんだ。」
「僕も。今日になるまでこの日が待ち遠しかった。」
幼い子供のように笑う陽一くん。
ほんとに楽しみにしてたんだと伝わってくる。
なんとなく会話が途切れ、前から気になってた質問をぶつけてみた。
「ねえ、洸くんと美穂は幼なじみでしょ?他の人達とはどういう風に仲良くなったの?」
けれど聞こえていないのか視線を外へ向け、リビングに向かうとバルコニーに出た。
「よっ…」
横顔からでもわかる、陽一くんの思い詰めた顔。
また、触れちゃいけない話に触れた。
空気読めなさすぎて自分が嫌になる。
「ごめんね。聞かない方がよかったね。」
バルコニーから出ようとした時、「僕ね」と言って話をし始めた。
