「いませんよ。麗華さんはいるんですか?」
「うん、いるよ。未戸香ちゃんのすぐ近くにいる。」
「あたしの?」
あたしの近くって、もしかして、
「陽一くんですか?」
「そう!よくわかったね♪」
だと思った。
わかりますよ。
だって麗華さん、陽一くんの元カノだもん。
どんな理由で別れたか知らないけど、まだ陽一くんのこと諦められずにいるだ。
笑顔で付き合っていた頃の話をする麗華さん。
話が進めば進むほど、苦しくなる。
心臓がギュってなる。
これ以上は耐えられない。
未戸香は席を立つとトイレへ向かった。
わかってた。
あたしが陽一くんに恋してること。
気づかないフリしてた。
麗華さんになんて勝てないもん。
あんな綺麗で優しい人になんて勝てっこないもん。
だから言わない。
陽一くんに恋してること、誰にも言わない。
麗華さんにも、陽一くんにも。
「結果の見えてる恋はしない。だから諦めよう。」
自分に言い聞かせるように何度も呟く。
