通るたび、みんなの視線が向く。
カンニングの件が学校中に拾ってるんだろう。
そんなのは想定内。
好奇な目で見られようが嘘か本当かわからない話をされようがあたしには効かない。
教室に入っても状況は変わらず、わざわざ隣の教室から見に来る人まで現れた。
陽一くんの席を見るとカバンが置いてあった。
もう来てるんだ。
ここにいないってことは空き教室かな?
じっとしているのも耐え難い。
未戸香は教室を出て空き教室に向かった。
階段を上がろうとした時、
「未戸香ちゃん!」
誰かがあたしを呼んだ。
下の階の階段を見ると麗華さんが笑顔で手を振っていた。
「やっぱり未戸香ちゃんだ!」
「おはようございます。」
相変わらず綺麗な人。
この綺麗さ、少しだけ分けて欲しい。
「テストのこと、気にしない方がいいよ。」
「そのつもりです。」
「あんなの姫になった未戸香ちゃんに嫉んだ誰かの仕業でしょ。」
「だと思います。」
姫になって2ヵ月も経つのにまだ受け入れてくれない人達がいる。
でもだからってこんな卑怯なやり方、許されることじゃない。
「そういえば、ちゃんと話すのって初めてだよね。」
「そうですね。受験の日以来でしたっけ?」
「そうそう!ねえ、放課後あいてるかな?一緒に甘い物食べに行こうよ!」
「甘い物、ですか?」
