「ゲホゲホッ…心配かけてごめんね。」

「あたし達は大丈夫だけど、陽一が」

「そうだ!陽一くん達は!?」





と言ったその時、あたし達が出てきた出口から面白おかしく笑う話し声が聞こえてきた。



あれは…陽一くん達?



遠くからでもわかる。

頬や口元、腕には無数の傷跡。



あたしのためにみんな…





「陽一くん!」

「未戸香…未戸香!怪我は!?」

「ないよっ!楓くんが一緒だったから。それより…陽一くん達、怪我してる…」

「あーこれ?ちょっとやり過ぎたかな。」





笑いながら頭をかく洸くん。



笑いごとじゃないよ。

こんなに傷ついてるのに。

あたしのせいで怪我しるのに。

なんで笑えるの。





「陽一くん…ごめ」

「そんな顔しないで。悪いのは未戸香じゃないよ。こうなる事は予測できた。なのに防げなかった俺らが悪い。」

「そうだ成海。お前が気に病むことはない。」

「遥先輩…でも…」





俯く未戸香の髪を遥はクシャクシャに撫で回す。





「わっ遥先輩、髪止めてくださいっ…!!」

「下は向くな。今みたいに前だけ見てろ。」





そう言って歯を見せニッと笑う先輩。





私の中で何かが変わった。


迷いがあるから恐怖が生まれる。

だったらそんな迷い、吹っ飛ばしてやる。



黒蝶12代目姫は他でもないあたし。

どんな脅しにだって耐えてやる。

そう思えるのは、みんなのおかげ。