〈美亜side〉
ザァァァ…
雨が容赦なく身体にあの言葉のように突き刺さってくる。
もう疲れたよ…

高2になって『いじめ』というものがこんなに身近なものになるとは思ってなかった。
最初は黒板に
『栗原美亜は売春してる』
なんてやったこともない嘘が書かれてたっけ…
それから、SNSで「あいつうざいんだよね」とか「マジきもい」とか書かれた。
私が何をしたっていうの?
もう疲れたよ…

私を1人で育ててくれた母親にはこんなこと言えない…
「あら、美亜ったらケータイも持たずにどこ行ったのかしら」

ゴォオオオ
目の前にはスピードが速い車がいっぱい通ってる道路がある。
「にゃぁん」
1匹の黒猫が足元に来た。
思わず抱き上げてしまった。
まるで、ひとりぼっちの私と同じだ。
「ドロドロだね、お前も1人なの?」
それに答えるように、にゃぁんとまた黒猫は鳴いた。
「私も1人なの、私と一緒に行く?」
飛び出したら痛いかな…
でも、生きてるより全然良いよね。
もう、生きてるのが辛いよ。
心を決めてあの速い流れに飛び込もうと一歩踏み出したとき。
「バカか!!!死にたいのか!?」
誰かに止められてしまった。
「なんでよ!!なんで止めるのよ!!」
だって…だってこれしかもう方法がないのに…
目からどんどん熱いものが溢れてくる。
「訳ありの猫、2匹だな」
その人はそう言って頭を撫でてくれた。
「とりあえず、俺の家に来い」