愛用のハンディカムを構えながら、報道記者のアレックス・アトーは、そんなマサレの様子を取材している。

彼が取材に来たのは、ムンギキの蛮行の為だけではない。

確かに大規模な組織であり、その犯罪も凶悪極まりないものではあるが、最近このナイロビで、異常な死体が数多く発見されているのだ。

ムンギキ御用達のマチェーテで切断したのではなく、まるで力任せに四肢を引き千切られたような死体。

そこにアレックスは、長期に亘って追いかけ続けている『男』の暗躍を感じていた。

世界的に有名な天才外科医で、数々の難病の手術を行うべく、世界中の病院を行き来しており、その手術成功率も極めて高い。

世界初の症例や過去類を見ない術式も悉くやり遂げ、ゴッドハンドの異名を恣にする、医学界ではまさしく神。

金の長髪、蒼い瞳、整った顔立ち。

しかしその所業は人体実験、生体兵器の研究など、神とは程遠い。

いまやテロリストと同類のマッドサイエンティスト、アンドレイ・ホプキンス…。