そう思ったあたしは咄嗟に「協力する!!」と、叫んでいたのだ。


千鶴がその言葉にニヤリと笑う。


「ちょっと、卑怯じゃない!!」


有紀が暴れて逃れようとするが、今度はそう簡単には逃がしてもらえない。


すると千鶴が今度は有紀へとタバコの火を近づけたのだ。


有紀の目の前にタバコをかざし、「目、潰しちゃおうか?」と、仲間に聞く千鶴。


仲間は面白がって千鶴をはやし立てる。


タバコの火が有紀の右目にゆっくりと近づいていく。


「やめて……!」


有紀が叫び、身をよじる。


「やめてほしい?」


千鶴が小首を傾げてそう聞いた。


「あたしね、どんな事をしても大抵許されちゃうの。パパが警察の上の人ともとっても仲がいいから。

だからね小学生の時にバレた万引きも、中学生の時に殺した動物も、全部なかったことにしてもらえた」


千鶴はそう言いながらクスクスとおかしそうに笑う。


「ここであなたの目を潰してもまたパパがもみ消してくれる」


そう言いながら、有紀の目に触れる数センチ先でタバコを止めた。


有紀にはタバコの先の真っ赤な炎が燃え盛っているように見えているだろう。


その目から一筋の涙が流れた。


「わかった……千鶴に協力する……」


その涙は恐怖の涙だったのか、なにもできない自分を責めて泣いたのか……。


千鶴たちが帰って行った後も、有紀はなかなか泣き止まなかったのだった。