「これくらい大丈夫だよ。すぐに治るから」


あたしは慌ててそう言った。


こんな状況で仲間割れが始まってしまうと、本当に脱出できなくなってしまう。


それだけは避けなければいけない。


でも……あたしはさっきの《リプレイ》を思い出していた。


真や信一がお金の貸し借りで喧嘩をしていたなんて、知らなかった。


昨日は2人にしかわからないような事を口走り、そして真が信一を殴ろうとしていたように見えた。


2人にしかわからない事だから、喧嘩の仲裁に入ろうにも入れなかったのだ。


どちらが悪いとか、そういう事も見ていてよくわからなかったのを覚えている。


なら、なぜ今回の《リプレイ》で真と信一はわざわざお金の貸し借りという出来事を口にしたんだろう。


あんな喧嘩の内容なら信一が悪いとひと目でわかる。


それに《リプレイ》の正確性に欠ければ自分が制裁を受けるかもしれないのに……。


そこまで考えて、あたしの視界に千鶴が写った。


真が千鶴の頭を撫でていて、千鶴はされるがままになっている。


それを見た瞬間、あたしの心臓はドクンッと跳ねた。


まさか……。


口の中がカラカラに乾き、呼吸がはやくなるのを感じる。


まさか、真はわざと正確性を低くして千鶴を守ろうとした……?