「そんなのでうまく行くの?」


千鶴が半信半疑な様子でそう聞いた。


「わからない。マイク代わりに紙を使ったって大したことはないだろうし、下まで届くとは思えない。


運よく、高いビルにいる人に声が届くか届かないかってところだと思う」


続は面々を見回しながらそう言った。


「それでも、なにもしないよりはマシだな」


そう言ったのは信一だった。


信一の手にはすでにノートが握られている。


「この中で一番声が出るのは運動部の俺だろ? 俺がその役目を引き受けるよ」


信一の言葉にはあたしは頷いた。


「あぁ。頼むよ」


続もそう言って頷く。


信一は机に乗り、換気扇の羽を取った。


できた空間にラッパ状にしたノートを差し込み、大声で叫ぶ。


思わず耳をふさぎたくなるような大声に、あたしと続は目を見開いた。


普段は千鶴のそばにいるだけでそれほど目立つ存在じゃないけれど、今の信一には逞しさを感じられた。