「換気扇……?」


千鶴が首を傾げる。


「そうか。その換気扇の穴から外へぬけようって言うんだな?」


信一がそう言い、続へ駆け寄った。


あたしたちも、後を追いかける。


換気扇の真下に来てみると、その穴の小ささがよくわかる。


30センチほどの四角形で、男子の体は通らないだろう。


「でも、換気扇の外は地上何十メートルあるかわからないかもよ?」


そう言ったのは千鶴だった。


確かに、換気扇の向こう側が建物の外に直接通じていたら、外へ出る事はできない。


空気を送り込むための通路がどこか別の、安全な場所へ通じていなければ、脱出はできない。


そしてその可能性はとても低い。


だけど続は目を輝きを失わせない。


その理由がわかったのか、真が口を開いた。


「いや……外へ通じているなら、どこかに声が届くかもしれない」


「そうなんだよ、真」


続が頷く。


「あたしたちの声が届く……?」


「あぁ。換気扇の羽を外して、机に上って近づく。それから教科書やノートを丸めてマイク代わりにするんだ」