「なんでよ!? あんただって助かりたいでしょう!?」


「もちろん助かりたい。こんなわけのわからない教室から一刻も早く出たい。でも、続が言う通りだ。


物を壊すことで警告を破ることになったら、どうなるかわからない……」


真はそう言い、有紀の遺体へ視線を向けた。


「犯人は直接手を下さなくてもあんなにむごい殺し方ができるんだ。警告を破るとどうなるか、考えただけでも恐ろしい」


真の言葉に、千鶴は持っていた椅子を力なく床へと置いた。


「直接手を下さなくても……殺せる……」


千鶴がそう呟き、そして自分の体を抱きしめた。


それを見ていた信一が駆け寄り、後ろから千鶴の体を抱きしめた。


教室の中は静かになり、残った5人の息遣いだけが聞こえている。


むせ返るような血の香りの中、あたしたちは荒い呼吸を繰り返す。


「奏、大丈夫か?」


続があたしから身を離し、そう聞いてくる。


あたしは「うん……」と、小さく頷いた。


続も、少し顔色が戻っているようだ。


「まさか、こんな事になるなんて……」


有紀とは特別仲がよかったわけじゃないけれど、席が近くなってからはよく会話をするようになっていた。