アスラと名乗った牢の中の彼女の言葉を聞き届けて、
それからシュリも続けて名乗る。




そんなシュリの行動を予測していなかったのか、アスラは驚いたように瞳を見開いた。

まぁ、確かに罪人として捕われた者を前に対等に名を名乗る王を前にすれば
驚くのも当然かもしれないが。





「礼儀を知らない奴なら、王としての俺じゃなくともいいだろう?

....固いのは、俺には合わない」



シュリはそこまで言うと一旦、言葉を切る。

そして一つ息をつくと、顔に軽く笑みを浮かべて続けた。





「お前に興味が湧いた。
少し、話を聞かせてもらう」




他人に興味が湧く。
そんなこと、シュリにとっては久しぶりなことだった。

ましてや、その興味の矛先に居る相手が、シュリの一番嫌う、悪の道を行く者なら尚更だ。



あの日。

父を殺され、シュリが変わったあの日から
シュリは、自分自身のことで....そして国のことで手一杯で


他のものに構っている暇などなかったのだから。






(───久々に、楽しませてくれそうだな)



シュリは、心の中にある気持ちへの戸惑いと、何処からか沸き上がる不可思議な期待感に

知らないうちに、笑みが零れていた。