蒼の王様、紅の盗賊

 
 
 
 
 
蒼の王様。

そう呼ばれる主の姿を思い浮かべ、一人の兵がポツリと呟く。



その呟きはやけに大きく響き、静か過ぎる部屋の中に谺した。







あの事件。
まだ彼―――シュリが王位を継ぐ前、彼を....大きく変えたあの事件。
誰もの頭の中に、まだ鮮明に深く刻まれたあの事件。


彼が....シュリが大切なものを失った事件。




一人の兵の呟きが谺する部屋の中で、あの日の記憶が....辺りを哀しみへと誘う。
 
ただ夜の闇だけが空しく、ただ静かに佇んでいた。