「っていうか……さっきのちょっと嘘かも」

「え?」

私と同じジュースを持ちながら、健二くんは隣に座った。そして……。


「顔色悪く見えたのは本当だけど、七海ちゃんのことタイプだったからその……うん」

健二くんの耳がみるみる赤くなっていく。

こんな男の子の表情を見たことがなかったから、私とっさに違う方向に目を向けた。

わ、私のことがタ……タイプ?

どこが?どの辺が?

もしかしてこれっていわゆるナンパみたいなものだったのかな……。恋愛未経験の私にはいきなりハードルが高すぎる展開だよ。


「あ、でもいきなり付き合ってくださいとか言わないよ?七海ちゃんのことなにも知らないし。ただあのままぶつかった人だけで終わらせたくなかったっていうか……」

この動悸はなんなんだろう。

免疫がなさすぎで言葉がうまく話せない。


「急にビックリするよね?ごめん」

「いや……」

「俺もこんなことしたの初めてだし一目惚れとかも信じてなかったんだけどさ」

「……」

「でも七海ちゃんに彼氏がいなくてよかった。あの時さらっと聞いたけど内心はすげードキドキしてた」


……笑うと目が細くなるんだな。

余裕に見えて実はそうじゃなかったり、バッティングしてる時もムリして気さくに振る舞ってたのかな、なんて考えてみたりして。


「もしよかったら連絡先聞いてもいい?」

……連絡先。

今はスマホを開きたくないし、きっと迷惑メールでそれどころじゃないから交換してもやり取りできるかどうか……。


「あ、イヤならムリしなくていいんだからね!」

「イヤではないんだけど……」

「じゃ俺のだけ教えておくから気が向いたら連絡してよ」

健二くんはそう言ってアドレスと番号を書いた紙を渡してくれた。