「幼馴染みだけど彼氏彼女?」

「うん」

「喧嘩したら?嫌いになったら?」

「なるわけないっしょ。ナナと一緒にいないことなんて想像できない。だから喧嘩しても嫌いになってもずっと一緒にいてよ」

「うん」

ハチがそう言って私の手を強く握り返した。


これからなにがあってもふたりなら大丈夫。

ハチと一緒ならなんだって乗り越えられる気がするから。


「あーなんか安心したら腹減った。俺昼めし食べてないんだよね」

「え、食べてなかったの?」

「うん。ナナの弁当ずっと待ってた」


……待ってたんだ。

だってあの時はもう完全にハチに嫌われたって確信してたし、大袈裟にいえば人生終わったかも、なんて考えてた。

だから田村くんにもお弁当を頼まなかったし、きっと私が渡さなくてもハチはなにか食べてるだろうと思ってたし。

腹ペコだったのに色々とムリさせちゃって、ハチには本当に悪いことしたな。


「……あるよ。お弁当。だけど時間経っちゃってるしお腹壊したらイヤだから明日ちゃんと作る」


私のカバンには朝作ったままのブルーのお弁当箱。

明日はいつもより早起きして気合いをいれて作ろう。ハチの好きなおかずをいっぱい入れて、ちょっと豪華に飾りつけしたりして。


「え、食べたい!今食べないと死ぬ!」

「ダメ!なんでも食べたがらないの。本当にハチは犬みたいなんだから」

「ワンワン」

「バカ」


きっと世界で一番落ち着く場所はハチの隣。

わたしたちはきっとふたつ並んでいないと形にならない。

手を繋いだ影がまるでさくらんぼのようだった。


今日からハチと私の新しい関係がはじまる。



【幼なじみとさくらんぼ】END