キキィ………ッ


と音を立て、車がゆっくりと止まる。




「着きましたよ、旦那様。坊ちゃん」



タナカは運転席から顔を覗かせるとそう言った。




「ありがとう。タナカ。」



父さんはそう言って、車を降りた。



「ねぇ、タナカ。後で、部屋に来てくれる?」



タナカはうーん。と考える素振りをすると、黙って頷いた。




「いいですよ、私に出来ることならやって差し上げます。」



ニコッとタナカは微笑み


「ほら、降りてください。」


と僕に指示をした。




「はぁい。」



タナカって、お母さんみたいなところあるから、好きなんだ。



使用人として…………な。




僕の母さんは僕を産んですぐ、亡くなったと聞く。





人間の女は、ヴァンパイアとの子を産む前に死ぬとなにかの文献で読んだ。



腹の子は成長しても、


産まれることが出来ないか、産まれてすぐに死ぬか。


そのどちらかに分類される。



そのため、ハーフは母親が人間。というタイプは比較的少ない。





「…………母さんが死んだのって、


“僕”のせい?」




小さく呟き、屋敷の玄関をくぐると



「そんなことは無いぞ。」


と父さんに頭をくしゃり、と撫でられる。




「ひゃっ?!聞こえてたの?」




くしゃくしゃと、頭を撫でられながら父さんを見ると




「ヴァンパイアの聴力と嗅覚は侮るなよ。」



と笑われる。



そうだ、ヴァンパイアって耳と鼻がいいんだった。




すっかり忘れてた。