Half of Race

「ひ、ひぇぇ………」



廊下を歩きながら、アルマは小さな悲鳴をあげた。





流石に上級生に睨まれてしまってはたまったものではない。




アルマはこれからどうするか、と頭を抱える。





あの上級生はヴァンパイアだろう。




さらに、学園のトップと来た。




アルマは目立たないように生活しないと。と固く決心し、自分の席へとついた。






「あー、とだな。


来週の日程を書くぞ。」





担任は面倒くさそうに黒板に来週の日程を書き始める。




カッ、カカカッ……と刻み良い音がほぼ無音の教室に響く。






「4月5日

1時限目 身体測定

3時限目 大掃除

4時限目 学校生活での諸注意

5時限目 新入生紹介」



達筆…とても言うのだろうか、綺麗な字で上記の事が明記された。





「質問あるかー?」




担任は気だるげに訊ねる。




皆、口を揃えて「ありませーん。」と言えば

「そうかい。」と、返事が返ってきた。





「よし、じゃあ帰っていいぞー」



担任はそう言うとさっさと教室の外へと出ていった。








「…………大丈夫。

やれるよ、今年こそは………大丈夫。だもん。」


アルマは小さな声で、自分を励ました。






机に引っ掛けていた荷物を取ると



「なぁ、あいつハーフだろ?」


とヒソヒソっと囁く声が聞こえた。



ドキリ…と心臓が跳ね上がる




まさか、自分のこと?



恐る恐る周りを見ると、話をしている声の主は全くの別方向を見ていた。





良かった、自分のことではなさそうだ。




アルマはこの学園に元からいた生徒ではない。




本当は別の一貫校に通っていたのだが、ハーフであるというだけで



周りとは違う扱いを受け、からかわれ続けた。






そのまま、高校に進学するのも嫌だ。と無理を言って此処を受験した。






父親が出した条件は1つ。








“何があっても、必ずここを卒業しなさい”







アルマはその言葉を胸に、新たな一歩を踏み出した。








父親の待つ玄関へと足を進めると



グイッ!と制服の襟を後ろから掴まれた。




「グぅ!」



カエルをひき潰した様な声が、アルマの口から出た。





「…ぶははっ!聞いたか?今の!」





頭上から笑い声がした。



「ああ!傑作だな!」



チラ、と首が回る分だけ周りを見渡すと



ヴァンパイアが4、5人そこにいた。






「ひぇ……………」





何故、こうなっているのだろう。とアルマは考える。






「あ、あの……」



小さな声で、アルマを捕らえたヴァンパイアに声をかけると





「なんてこんな、パッとしないのを所望するんだか。」



と呟かれる。





「………あぅ。」




恐怖に、口をぱくぱくさせていると




「……………いたか?」


と朝、ぶつかった男の声が聞こえた。





ビクンっ!と肩が跳ねる。








「顔、かせや。」




威圧的な声で男はアルマの顔を覗く。




「あ、あの…………、親を待たせているのですが」





小さな声で抗議すると「あ゛ぁ゛ん?」と睨まれる。





ぴっ!と肩を縮めると



「なぁ、レオ。こいつのどこがいいわけ?」


とアルマの制服を掴む男が、レオに問う。







「あ?知らねぇよ。」




問いの答えになどなっていない返事をレオがした。






「………あの、本当に親を待たせているので」






と言えば、「離してやれ。」とレオが指示した。




やっと襟首を開放されたアルマはペコッ!と小さくお辞儀をして玄関に駆ける。








ああ、目をつけられてしまっていたようだ。






と小さなため息を吐けば



「お疲れみたいだな。」




と父親が玄関から顔を覗かせた。



「父さん………。」




すたたっ、とそちらにアルマは駆け寄ると



「そうでもないよ」



と微笑んだ。