「そして、我が校では………」



校長は長々と祝辞を述べる。


「ふぁ……」



アルマの隣に座る人間の少女は小さな欠伸を零した。



「…………であって」



校長は気付いた様子もなく、祝辞を述べ続ける。




かれこれ、5分は話しているのではなかろうか。



何時までこの話が続くんだ。


皆が、そう思っただろう。



「………祝辞として、みなさんに送ります。」






校長がステージから降りる。



やっと終わったぁ………。



と、アルマは少し息を吐いた。


この後はP.T.A、来賓の祝辞が述べられる。




P.T.Aや来賓の祝辞は短かろう。と思いアルマは肩の力を抜く。





気を張り詰めすぎて、少し頭が痛くなったのだろう。





アルマは眉間を軽く押した。




「P.T.A会長……」

進行者がP.T.A会長の名前を言う。



アルマはすぐに手を膝の上に乗せた。


P.T.A会長はヴァンパイアの女性だった。




アルマは一瞬、ほぅ……とその人に見とれる。



自分の母親にとても似ていたからだ。




「起立。」


進行者の声にアルマは慌てて立ち上がる。


ピシッ!と直立すると、皆とタイミングを合わせお辞儀をする。




頭をもたげると、すぐに「着席。」と指示を出される。




ストン、と椅子に腰掛けると女性は祝辞を読み上げ始めた。









「春、桜が咲き乱れ始める季節になりました。


本日、皆様がご入学されたこと…」




やはり初めの文句は皆、同じ事を言い始めるのだろう。







何処か、居心地の悪いこの空間から早く出られないだろうか。


そんなことを考えながら、話を聞き流していると



「祝辞として、みなさんに送ります。」

と女性は話を締めた。



進行者の合図に合わせて立ち上がり、礼をする。





入学式はつつがなく進行し……


「国家、斉唱。


保護者、来賓の皆様、全員ご起立ください。」




ガタッ!と音を立て、皆が立ち上がる。





皆で、国家を歌い終えると「ご着席ください」と指示が下る。




カタン…と椅子に座ると、来賓の人がゾロゾロと会場から出ていった。





「新入生は、担任の指示に従い教室へ向かってください」




進行者のアナウンスと同時に担任が「ついてこーい。」と言ってアルマたちを教室へと連れていく。





今日は、何も言われなかった。


胸をなでおろしたアルマは保護者席にいるであろう父の姿を探した。






その時、目に入ったのは………



自分をジロッ……と睨む、上級生。





アルマは今朝の人だ。と直感し、すぐに目線を下に向けて歩き始めた