「いまの、…ユラさま」

「ボクたちの、おせわしてくれる」



少し落ち着いたらしい2人が、私にもたれかかったまま教えてくれた。


「ユラちゃん?綺麗な子だね」



そう言って3人で和んでいると。



「ほら!あそこ!」



「おやおや、本当ですねぇ」

「のぅ?言ったとおりであろ?女子が来た!!」

「うん、わかったから落ち着いて、ユラ」



さっきの女の子と、もう1人。



男の人の声が聞こえた。

またそちらに目を向けると、先ほどの女の子と、私と同じか、少し上くらいの男性がそこに立っていた。



真っ黒な髪を背中に垂らして、真っ白な袴を着ている。


二人とも、巫女さんがよく身につけている装束を。





「えっと、ここの…巫女さんたちですか?」


私がそう問いかけると、男性のほうが。



「…いえ。私たちはここの神に使える神使です」

「しん、し?」



聞いたことがない言葉にオウム返しすると。


「かみつか、とも言われますが」

「そこの狛犬の上司とでも思えばいい」


二人とも説明してくれた。


けれど。



全くわからない。


「わらわはユラ、こやつはトキと言う。よろしゅうな?」



「えと…愛由里です」


「あゆ…り……」



「愛由里……さん…ですか。…………久々にきた参詣者ですからねぇ。ミケたちもはしゃいでいるのでしょう」


私の名前を聞いた2人は、驚いたように顔を見合わせたけれど。




男性がニコニコと取り繕った。


「ううん、あのね、おねーさんね」



「ボクたちきれーしてくれたの」



と、ミケくんたちが嬉しそうに語った。


…私に抱きついたまま。


「きれー?」

ユラと呼ばれた女の子が二人に向かって首をかしげると。


「らくがき」

「けしてくれた」


ニコニコと胸を張っていた。




「おやおや。では、お礼をしなくてはいけませんね」


「お礼なんてそんな…」

「いや、いい案じゃ。そら、朔夜様に紹介しよう」



恐縮する私の腕を、ユラと呼ばれた少女が引いた。


それに伴い元々しがみついていたミケくんたちが私から離れる。




腕をひかれて私が立ち上がると、ミケくんたちは私と手をつないで歩き出す。


私は2人に引っ張られるまま歩く。



「えっと、あの?『さくや』様って…」


「ぬ?」


ウキウキと前を進んでいたユラちゃんが振り返って、後ろ向きのまま歩き続ける。