久しぶりに病院を出て、街を歩く。





母は、泣き腫らした顔を人に見られたくないからと、病室で先生と話している。




どこまでも青い空は、綺麗で。


そこを自由に飛んでいる鳥たちが、羨ましくて。




私には、一ヶ月の自由しかないのに。







…………生きたい。



母を、置いていきたくない。



私の父は私がまだ幼い頃に事故に会い、死んでしまった。



その後を追いかけるのが、私なのだ。


母は、一人ぼっち。





…………それは、死んでしまうよりも辛いのではないだろうか。





あんなに優しくてもろい母。


私の大切な、母。



自由なんてなくてもいい。



母に会えなくたって。







それでも。



私は生きてるって、1人じゃないよって、お母さんに言って上げたい。



会えなくたって、生きてるから、1人じゃないよって。




…もう、叶わないけど。







「にゃあ」



不意に、後ろから猫の声がした。


振り向くと、1m先にくろい子猫がいた。





ゆっくり近づいて、猫の前にしゃがみこむ。



頭をなでてやると、猫は逃げずにじっとしていた。



「………君も、ひとりなの?」


まだ小さいのに。




寂しいよね。


「にゃ?」





突然、猫が走り出した。



「え?どこいくの?」





「にゃー」



猫は少し先に走っていくと、まるで私を待っているようにそこに止まった。



「……ついてこいって言ってるの?」


猫はyesと言うように、一声鳴いた。









猫について行くこと10分。


いつの間にか人気のない道にいた。




裏道なのか、よくわからないけど、暗く寂れた場所。


「にゃあ」



辺りを見回していると、早く来いというように猫が鳴いた。



そちらに歩いていくと。





「え……」


深い森。


そう、まるで森の中に迷い込んでしまったかのような風景がそこに広がっていた。



そして、その奥には、そこだけ現と隔離されたように、鳥居がたっていた。