「先生…!?それはどういうことですか!?」


真っ白な病室、外は晴天だと言うのにくすんだ空気。



私にはそれが、とても息苦しくて。



たった今告げられた医者の言葉に、反応できかねていた。


「……ですから、もう…もってあと、一ヶ月、かと」


「どうして…だって愛由里はまだ17なのに…!!」



ベッドに腰掛け外を眺める私の隣には、涙をいっぱいに貯めた母が肩を揺らしていた。





………私は生まれつき心臓が弱かった。


少し走っただけで心臓は悲鳴を上げ、息することすらできなかった。




それが悪化したのは一年前。


家から学校までの道のりでさえ、歩くことが難しいくらい息ができなくなって。





医者には、いつの間にか進行していた病気に気がつけなかったと言われた。



生きられるのは、あと一ヶ月。



自分のことなのに、涙は出てこない。




今私が泣いたら、母が壊れてしまうと、そんな気がしたから。


大好きで、大切なお母さん。




病弱な私をとても大切に育ててくれた。


いつか恩返ししようと思っていたのに。



それすら、叶わない。







「なにか、なにか方法はないんですか!」


涙声でどうにか紡がれた母の声は、必死で。



「お母さん………」


もういいよ、とは言えなかった。














医者と母が今後について話すということらしく、病室から出ていったあと。





私は1人、白い病室で膝を抱えていた。


……………そっか。




「……私、死ぬんだ」





死ぬ。



………って、何だろう。



死んでしまったら、私。





私、は………。







ぽたりと、頬を何かが横切った。



手を当ててみると、透明な水が伝っていた。




………私、死にたくない。



まだやりたいことだって沢山あるの。





………………やりたいこと?



………って、なんだろう。





…よく考えたら、何も無いんだ、私。







でも、お母さん。



お母さんに、私、まだ何も伝えてない。


ありがとうも、ごめんなさいも、何も。



一ヶ月。



一ヶ月でいったい私に何が出来るの。


生きたい。









死を直前に感じて、初めて思った。




私は、私はまだ、生きたい。






生きて、今後を歩みたい。




したいことはないけど、それでも。








死にたくないよ……!!