ミケくんたちの案内でたどり着いた1室。





「お、おぉ……」





なんというか。




むっちゃ豪華。








布団の前に垂れ下がっている御簾は紫の花々が散りばめられ、金の刺繍が入っていて。



布団は少し体重をかけただけでもふぁん、と沈んだ。



「………すごい」






「ふふふー!」


「ふふーん」




というドヤ顔と共に差しだされた着物。




着替えろってことかな?






「ありがとう」




と、受け取ったはいいものの。



………………私浴衣しか着たことないや。






え、着方って同じなのかな。



とりあえず広げてみる、と。





「……綺麗」




桃色の地に白い菊の花が刺繍された、とても綺麗なものだった。







と、そのとき障子が開いて、ユラちゃんが顔を覗かせた。





「あ、やはり戸惑っておったか」





ユラちゃんはどうやら私が着物を広げて固まっているのを見て全てを理解したらしい。





「手伝ってやろう。ほれ、ミケたち。おぬしらも床につけ」




「…むー」


「……………ふぁーい」




渋々といった感じで頷いたミケくんたちは、そのままのそのそと部屋を出ていった。





「朔夜様の言う通りじゃの」




「?」




帯を持ち上げて確認しながら、ユラちゃんは口を開いた。




「着方がわからず戸惑っているのだろうと。朔夜様は感の鋭いお方じゃ」




………………なんか、バカにされた気がする。





「……朔夜様って、よくわかんないや」





強引だと思ったら優しかったり。




そう思えば、意地悪だったり。





「ふふ。全てあの方の愛情さ」





「?」





もしもあれが愛情だというなら、素晴らしくひん曲がっている。




「ほれ、できたぞ」




と、知らない内にユラちゃんは私の着付けを終えていたらしい。




…………いつの間に服を。





恥じらいすら感じなかったよ。




「ありがとう」



「礼などいらぬ。うぬがここに来てくれて、わらわは嬉しいのじゃ」




その言葉が意図するところがわからなくて、首を傾げる。




「朔夜様はの、うぬに会う前は抜け殻のようじゃった。それがうぬに会えたことで時が動き始めた。次にぬしに会えるのを楽しみにしてな」





……抜け殻?





彼女の言葉は、なんだか不思議なことを聞いているように聞こえて。





「……じゃあ朔夜様が、十年間待ってたって…本当?」




やっぱり、にわかには信じがたい。




だって子供の言葉だよ。






確実に忘れてるでしょ、この通り。