「………よ、嫁って………私が、貴方の、ですか?」



「そう言っておろう」


朔夜様は、私の前に歩いてくると、じっと私を見つめた。


「………………」


そして首をかしげ、どうだ?とでも言うように笑った。



「…えっと、私………」




生きたい、けれど。



生きたいとは、言ったけれど。







知らない人と結婚して、一生を添い遂げてまで生きたいとは思わないというか。




生きるなら、自分の人生を歩みたい。


「……あの、とりあえず私…」




決めた。











逃げよう。










「私、もう帰らないといけないので……このお返事は、また…」



ゆっくり朔夜様から距離を取ると。




「まぁ待て」


ドン、と、私の隣の壁を蹴った。



そして足を降ろさずに間近で私を見る。



「俺が逃がすと思うか?」


「いや…あの…………」


どうしたらいいんだろうか。



外にいるであろう4人は呼べない。


呼んだ瞬間私はここから出られなくなるだろう。




あぁ、どうしようこれ。




…………。



私はしばらく考え、そして一つの打開策……でもないけれど、策を見出した。








「…………朔夜様」

「ん?」


「ごめんなさい!!」


「っ!?」



そして私は思いっきり目の前の彼を突き放し、扉を開けた。



咄嗟のことに反応できなかったらしい朔夜様を残し、廊下に出ると。




「おや?」



ユラちゃんがひとり佇んでいた。


「、ごめんなさいユラちゃん!」



ユラちゃんの隣もダッシュで逃げる。


「!?…愛由里!?」









あぁ、まずい。



心臓が、痛い。







走っちゃダメなのに。



心臓が痛いのに。



それでも、私は足を止めなかった。