私が胸に少しの希望を抱いていると、彼は私に背を向けた。
「生かしても良いが、条件がある」
「…………………条件?」
「あぁ」
つぶやきながらも、朔夜様は袖口からキセルを取り出し、口にくわえた。
ぷかり、白い煙が吐き出される。
「……神といえど、人の命を操るなど本来ならば許されないこと。ひとつの例を除けばな」
「…?」
ぷかりぷかり、白い煙はどこかへ消えていく。
「まぁ、これも本来なら許されないのだが……………まぁ、よい」
「あの、何の話ですか……?条件って…」
「………お前が」
白銀のキセルが、彼の唇から離れる。
うすく笑った彼の目は。
「お前が、俺の嫁になればよい」
いたずらを思いついた子供のように、爛々と、楽しげに輝いていた。